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トピックス(10)痒みとは?

痒み(かゆみ)はしばしば起きる皮膚の症状ですが、いったいどのようなメカニズムで起こるのでしょうか。


痒みとは1,2)
痒みは「掻破(そうは:皮膚をかき壊す、かきむしる)行動を伴う皮膚の不快な感覚」と定義されています。皮膚をかく行動は、物理的に皮膚から異物を取り除いて、痒みのない元の状態に戻そうとする反応です。


痒みの起きるメカニズム1)
痒みは、痒みを引き起こす物質(痒みメディエーター)が皮膚の中で作られ、それが皮膚の中に分布する末梢神経上の受容体(かぎ穴)に結合し、神経を活発化することから始まります。痒みのシグナルは脊髄を通って脳に伝わり、痒みとして知覚されます。
痒みメディエーターには十数種類があり、その中にはよく耳にする「ヒスタミン」があります。痒みには臨床上、「ヒスタミンによる痒み」と「ヒスタミン以外の物質による痒み」に分けられます。ヒスタミンとヒスタミン以外の痒みメディエーターでは、痒みシグナルの伝達メカニズムが違うためです。ヒスタミンによる痒みには、抗ヒスタミン薬が効果を発揮します。


アトピー性皮膚炎の痒み3-6)
アトピー性皮膚炎の痒みは、「ヒスタミン以外の物質による痒み」が主体で、皮膚のバリア機能異常による「皮膚の過敏」、表皮と真皮における「炎症」が主な原因となっています。


①バリア機能異常による皮膚の痒み過敏
アトピー性皮膚炎ではアトピックドライスキンと呼ばれる乾燥肌をもつ患者さんが多く、ドライスキンは表皮角質層の皮膚バリア機能の破綻をもたらします。するとダニなどの抗原や、細菌・ウイルスなど異物(病原体)の侵入が容易になり、皮膚の過敏性が誘発されます。これは、痒みを感じる皮膚知覚神経が皮膚表面(角質層)のすぐ下まで伸びるためで、痒みを感じやすくなる(痒み過敏)一因となっています。


②炎症を起こす物質の活発化による痒み
ドライスキンによる皮膚バリア機能の破綻や、かきむしることで表皮が損傷すると、抗原や異物にさらされやすくなり、免疫機能が活発化します。すると体内に抗原や異物が入ってきたときに攻撃する指令(SOS)を出すサイトカインが活発になります。サイトカインとは細胞間の情報伝達を行う物質のことですが、アトピー性皮膚炎の痒みにはインターロイキン(IL)-4やIL-13、IL-31など、炎症を起こすサイトカインが関与しています。これらのサイトカインが知覚神経に直接作用・活性化することで痒みを引き起こすことがわかってきました。


【参考文献】
1) 江川形平:アレルギー 2020, 69(4), 256-259
2) 白鳥美穂:ファルマシア 2016, 52(8), 769-773
3) 稲沖真, 竹原和彦:ファルマシア 2005, 41(3), 239-243
4) 東直行:日医大医会誌, 2017, 13(1), 8-21
5) 古江増隆:福岡醫學雜誌 111(4):151-165,2020
6) 日本皮膚科学会ほか:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021 日皮会誌, 2021, 131(13), 2691-2695

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