皮膚疾患の基礎知識(3)皮膚疾患の治療 / 新薬の研究開発の難しさ
皮膚疾患の治療
皮膚科の治療は、主に5つに分けられます 1)。
【外用療法(薬物療法のひとつ) 1,2) 】
症状がある場所に薬剤を塗ることで、症状を改善させる治療法です。
外用薬には、有効成分が同じものであっても、軟膏、クリーム、ローション、シャンプー、ゲル、フォームなど様々なタイプがあります。
【全身療法(薬物療法のひとつ) 1) 】
内服・注射で、薬剤を投与します。全身に作用します。
【レーザー療法 1) 】
レーザー光を皮膚に照射することで皮膚の色調を変えたり、病変の元の組織や細胞を破壊したりします。
【理学療法 1)】
代表的なものは紫外線・赤外線を用いた光線療法です。
紫外線は通常、皮膚にとって“悪役”ですが、その作用を用いて、病気の元になっている細胞を殺します。放射線療法、液体窒素を用いた凍結療法、カイロなどで温める温熱療法などもあります。
【外科療法 1) 】
腫瘍(しゅよう:悪性のものは、いわゆる「がん」)や熱傷(やけど)、皮膚の欠損などに対して行われます。
【参考文献】
1) 清水宏:新しい皮膚科学 第3版, 2018, pp.89-113, 中山書店, 東京
2) 大谷道輝ほか:Prog.Med., 2021, 41:269〜280
新薬の研究開発の難しさ
皮膚科治療薬に限らず、医師が処方する医療用医薬品の開発には、安全性や効果を調べる臨床試験(治験)と呼ばれる試験など数多くのステップを踏み、ようやく使用できるようになります。
それを端的に表す数値があります 1)。
- 研究開発から発売までの期間:約15年
- 新薬誕生の確率:約20,000分の1
- 一つの新薬の研究開発費:約3,000億円
新薬の誕生まではとても長い道のりが必要ですが、患者さんに画期的な治療薬をお届けることが製薬会社の使命です。
創薬の“新しい波”
既存の治療法に加えて、最近は従来の薬とは異なるメカニズムの薬剤が続々と登場し、それにより改善する病気や症状も増えてきました。
それが、遺伝子組み換えなどのバイオテクノロジーを用いた「バイオ医薬品」です。 現在、さまざまな医薬品が使えるようになっています。
- 抗体医薬:免疫で大きな役割を果たす抗体を用いる 1)
- 核酸医薬:核酸(DNA、RNA)の構成成分で治療する 1,2)
- 遺伝子治療:遺伝子を体内に入れて蛋白質を作らせ病気を改善したり 2) 、人体から取り出した細胞に病気を治療する機能を付けてから戻したりする治療(後者は細胞治療ともいう)1,2)
さらに、患者さんそれぞれの体質や症状に合わせた治療ができるようにする「個別化治療」への取り組みも進められています 1)。
【参考文献】
1) 佐藤健太郎:創薬科学入門, 改訂2版, 2018, pp.37-41, 93-101, 193-195,198, オーム社, 東京
2) 国立医薬品食品衛生研究所 国立医薬品食品衛生研究所:薬の最前線 遺伝子治療薬と核酸医薬. 2010年7月