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疫学と原因

アトピー性皮膚炎は小児だけの病気ではない
成人でも要注意

日本国内の調査によると、アトピー性皮膚炎の有病率は幼児期にピークが来て、成長とともに減少すると考えられています 1,2)。また、乳幼児期のアトピー性皮膚炎の多くは治っていくと言われています 3)。
しかし、幼少期にアトピー性皮膚炎を発症した約75%が成人までに治る一方で、残りの約25%が成人になっても治っていないという報告もあります 4)。

成人になってからアトピー性皮膚炎を発症する人もいます。その割合は4人に1人との報告もあるため 5)、決して他人事ではありません。成人発症での年齢のピークは20-40代と比較的若いことが特徴で6)、近年増えているとの報告があります 7)。
成人発症の場合、幼児期から続いているアトピー性皮膚炎と比べて、かゆみがより強く、高血圧症などの併存症と関係している可能性もあります 8)。


アトピー性皮膚炎の原因で重要なのは
「アトピー素因」と「皮膚バリア機能」4,9,10) 「アトピー素因」があり、皮膚バリア機能が弱まっていると、アトピー性皮膚炎が引き起こされやすくなります。 アトピー素因は、以下の要素を指します。

  • アレルギー疾患 (アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、結膜炎、気管支喘息)の家族歴、既往歴がある
  • アトピー性皮膚炎の症状を引き起こす免疫反応が起きやすい(ダニ・ハウスダストなどに反応するIgE抗体が出やすい)

つまり、「アトピー素因」があって、皮膚が体外の物質をバリアする機能(皮膚バリア機能)が弱く、免疫反応を起こしやすい物質が体内に入ってくると、アトピー性皮膚炎の炎症を起こしやすいのです。


【参考文献】
1)山本昇壯:平成14 年度厚生労働科学研究費補助金:免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業研究報告書:第1分冊,2003, 71-77
2)Saeki H, et al.:Br J Dermatol. 2005, 152(1), 110-114
3)西岡清監修, 片山一朗編:インフォームドコンセントのための図説シリーズ アトピー性皮膚炎 改訂版, 2010, pp.8-9, 20-23, 40, 医薬ジャーナル社, 大阪
4)Thomsen SF, Eur Clin Resp J 2015; 2: 24642
5)Lee HH, et al.:J Am Acad Dermatol. 2019, 80(6), 1526-1532
6)Silvestre Salvador JF, et al.:J Investig Allergol Clin Immunol. 2017, 27(2), 78-88
7)清水宏:新しい皮膚科学 第3版, 2018, pp.119-125, 中山書店, 東京
8)Megna M,et al.;Italian Adult Atopic Dermatitis Study Group:Arch Dermatol Res. 2017, 309(6),443-452
9)日本皮膚科学会ほか:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018 日皮会誌 2018, 128(12), 2431-2502
10)病気がみえる vol.14 皮膚科, 2020, p.81, メディックメディア, 東京

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